国内で劇症型溶血性レンサ球菌感染症の発生が、過去最高になっています。
劇症型溶血性レンサ球菌感染症は急激に進行し、しかも致命率の高い感染症です。それが近年になく、国内で発生していることが報じられています。
この感染症は5類感染症の位置づけですが、病態が重篤なことから、全数把握疾患(すべての医療機関から診断の届け出が必要な感染症)とされています。
現在、国内でA群溶血性レンサ球菌感染症、劇症型溶血性レンサ球菌感染症が増加しつつありますが、これは2010年代に英国で流行した病原性・伝播性が高いとされるUK系統と同じ型で、2023年の夏以降国内で見られるようになってきています。
国外でも、2022年から2023年初めころに、英国、フランス、アイルランド、オランダ、スウェーデンで小児の間で溶血性レンサ球菌感染症が流行し、それと同時に、劇症型溶血性レンサ球菌感染症の報告も増えていた地域がありました。
海外での溶血性レンサ球菌感染症、劇症型溶血性レンサ球菌流行と、国内での流行との関係は現時点では不明ですが、先の新型コロナウイルス感染症が流行している間に私達は、人に接する機会が減少し、多くの感染症に対する免疫力をなくしてしまいました。
今回の流行は、インバウンドの回復による海外からの訪日観光客の激増に伴い、様々な病原体が持ち込まれてもおかしくない状態の中での発生と考えるのが自然でないでしょうか。
1980年代に欧米で四肢の軟部組織の壊死性炎症を起こし、急激なショックや、多臓器不全に至る重篤な感染症の報告が相次ぎました。
日本では1992年に最初の報告があり、1995年に大きな流行を起こしたものの、その後は毎年、100人~200人程度の感染例で、大きな流行は発生していませんでした。
それが、この所、また国内での発生がみられているのです。
A群溶血性レンサ球菌
咽頭、扁桃などの上気道粘膜での炎症、傷などのA群溶血性レンサ球菌感染に続発。感染経路が不明な症例も多い。
咽頭痛などで発症する咽頭炎、外傷などの後に突然の発熱(高熱)、悪寒戦慄、血圧低下などで始まり、敗血性ショックの状態となります。
臨床症状は多様である。
発症者の多くは糖尿病や肝機能障害などの基礎疾患を持つ人が多い。
実際、患者家族、医療従事者での発生は見られていないので、厳重な隔離などは不要と考える。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、扁桃炎の十分な治療が重要になる。
溶血性レンサ球菌は経口感染が主と考えられ、咽頭、特に扁桃腺に付着し、唾液の中に排出されることから、それらの病原体を取り込まないようにするためには、手に付いた病原体を石鹸で洗い流すことが大切になります。