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新型コロナウイルス(COVID-19)について Dr.岩崎の考察と提言
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新型コロナ感染症について考える

流行を繰り返さないために、私達は何をするべきか?

オリンピック、パラリンピックも終わり、日本では新型コロナ感染症患者は著しく、減り始めました。感染症を専門として来た私にとって、この感染者の減少は不思議な事ではありませんでした。

今回の、新型コロナ感染症の流行(第5波)は、オリンピック、パラリンピックとは関係ないと言われてきましたが、私は感染症の原則から考えると、もちろん関係はあると思っています。

実際、オリンピック、パラリンピックでは、競技大会が始まる前から、多くの国から選手だけでなく、関係者が日本にはやって来ました。選手が試合で活躍するためには、準備は大切です。その時点では、世界にはまだまだ、新型コロナ感染症が流行している地域は多く見られていましたから、これらの地域から、入国して来た人々によって日本国内に持ち込まれる可能性は高かったと思います。

日本への入国に際しては、入国者は空港の検疫で感染症に罹患しているかどうかのチェックを受け、そこで対応が取られます。しかし、入国時に無症状であれば、検疫で感染者を見つけることは困難です。

そもそも、感染症を引き起こす病原体は、必ず、人の中に入って感染者(患者)として移動します。そして、人々の中を移動しながら、感染症を伝播し、時には流行を引き起こします。

様々な国から来た人々の日本滞在期間に多くの人々と接しながら、感染を広げ、日本国内で感染者が増え、第5波となってしまったものと推測されます。

新型コロナウイルスイメージ

しかし、オリンピック、パラリンピックが終わり、海外からの人々の入国者も激減した上、それと同時に、日本でのワクチン接種が進み、国民の中に免疫を持った人が増えたこと、新型コロナ感染症が季節性の感染症であり、夏場では流行しにくいなど、様々な要因が重なったことが、感染者の激減となったものと考えます。

新型コロナ感染症患者数が減り始めて、少し世の中が落ち着きを取り戻した今こそ、新型コロナ感染症の実態について、振り返り、考えてみるには、一番、良い時期のような気がしています。
今までの流行の中で学んだことや、言われてきていた事などを振り返りながら、流行を繰り返さないために、私達は何をするべきだったか?どうして防げなかったかを考える機会としたいと思います。

一体、リスクはどこにあったのか。タイで学んだ感染症対策の基本

どのようにして私達は新型コロナ感染症に感染したのでしょうか?
一体、リスクはどこにあったのでしょうか?

私は感染症の基礎を学んだタイ国のマヒドン大学での熱帯医学の授業を思い出しながら、新型コロナ感染症を見続けてきました。
日本で医師となった私は、タイの大学で学んだ感染症の知識は、日本では学ぶことのなかったことが多く、衝撃を受けました。
比較的清潔でな日本では、あまり大きな感染症の流行はインフルエンザ位で発生していませんでしたが、熱帯地域や衛生状態の悪いと発展途上国などでは、現代の日本では発生しないような感染症の発生は日常茶飯事でした。
そんなことから、それらの地域では感染症の知識は大切であり、感染症対策は生きてゆくための大切な手段だったのです。

そこで、私は感染症の基本的な知識をもう一度勉強しなおしました。
そこで学んだことの一つに、感染症に罹る場合には、多くの場合は病原体を自分の手や指で拾っていることを教えられたのでした。
すなわち感染症は、それぞれの人の生活習慣が強く関係しているとも教えられました。
その地域の衛生状態や、その地域の人々の生活習慣などが、予防には大切であることも知りました。
簡単に言うと、手を洗う習慣が身についた人、手を洗わない人・・・・・こんな習慣一つでも、感染症に罹患するかどうかも決まることも知りました。



これが、感染症対策の基本です。

病原体はどのように体の中に取り込まれるのか

感染症では、感染症を引き起こす原因となるものを、私達は病原体と呼びます。
その、病気の元となる病原体(リスク)をどのようにして、自分の体の中に取り込んで、感染してしまったのでしょうか?

一般には、私達が、体の中に病原体(ウイルス、細菌、カビなど)を取り込み、感染症に罹るのは、最も多い経路は鼻、口、口唇、気管などの粘膜からです。
どのようにして病原体がそれらの粘膜に到達するのでしょうか?
多くは、私達が手に触れた病原体を口、鼻に手をやって、粘膜に触れて、その粘膜から体内に入ります。
粘膜からは、皮膚とは違って、病原体は簡単に、体の中に吸収され、取り込まれます。

ウイルスの感染部位と侵入経路
※画像出典:東洋経済オンライン

新型コロナ感染症では、インフルエンザと同じように、手で拾った病原体を粘膜から吸収された病原体は、鼻と咽頭の中間にある上咽頭と言う粘膜のリンパ組織で増えます(増殖と言います)。
その時に増えたウイルスは、唾液の中に出たり、鼻水の中に出ます。そして、くしゃみで飛散したり、唾液の中に出、飛んだ唾などの中に飛び散ります。
その時期には感染者はマスクをして病原体を排出しないように注意が必要です。
上咽頭で増えたウイルスは、血管に入り、全身に流れて行きます。
その時に、血管壁の炎症を起こしたり、時には機能の落ちている器官、臓器(呼吸器など)で、強い炎症などを起こしたりします。 ⇒肺炎

この新型コロナウイルス感染症は、全身を回るときに血管壁の炎症や変化を及ぼします。
その結果、血管の脆くなっている高齢者、糖尿病罹患者、生活習慣病に罹患し、血管壁にコレステロールが溜まっている人々は、特に大きなダメージを受けてしまいます。

すなわち、新型コロナ感染症では、肺炎だけでなく、全身疾患であることをもう一度、認識してください。

血管に大きな変化を起こしますから、心筋梗塞、脳梗塞なども起こします。


新型コロナウイルス症状の進行
※画像出典:NPO法人医薬ビジランスセンター

全身を回ったウイルスの排出は

最終的には、取り込まれたウイルスは全身を回って、どのように排出されるかを考えてみましょう。

以前に私は最も重篤な感染症であるエボラ出血熱などの現場で働いたことがあります。そこで私が知ったことは、感染者の排泄物(便や吐物)から病原体が排出され、それらに触れた手で触れて人が感染しているのが最も多かったことでした。
そのエボラ出血熱の現場での2週間で学んだことは、排泄物(便や吐物)は非常にリスクが高いと言うことでした。

それを裏付ける調査データが、この新型コロナ感染症でも報告されています。
今回の新型コロナ感染症の流行が発生すると、同時期に、下水のコロナウイルスのウイルス量も増えることをもご存じでしたか?
下水に流れるのは水洗トイレの設備の進んでいる仙台市での調査で明らかでした。

下水と新型コロナ感染者数の相関2
※6月22日NHK仙台てれまさむね

新型コロナウイルス感染症では便にウイルスが排出されていると言うことを知っていることも大切なポイントになると思います。

感染しないために、特に注意が必要なのはトイレ

患者の便に出たウイルスを排便後にお尻を拭いた紙などを介して手に着くことも考える必要があります。
感染者の使ったトイレには感染者の手に着いたウイルスが付着している可能性は捨てきれません。
大勢の人が使うトイレなどは、注意が必要です。
その場合には、石鹸を泡立てて手を良く洗い、ペーパータオルでしっかり拭いて、周辺に触らないようにして出てきてください。

マスクに気を取られて、排泄物のことは、注意を怠っていませんでしたか?

私は、そのような多くの経験を通して、この新型コロナ感染症も感染者の唾液、鼻水、咳の飛沫、そして便に、新型コロナ感染症では病原体は排出され、それらに気を付けることが必要と考えます。

家庭内感染、同じ社内での感染、それらの人々が共有するものはトイレ以外ありません。
そんな意味でトイレを使った後は、石鹸で十分に石鹸で手を洗って出てきてください。
ドアノブ、手洗いの蛇口、その辺りに触れた後は、しっかり手洗いをしましょう。

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