この所、新型コロナ感染症患者数はすっかり減りました。
その理由は良く分からない…などの言葉も聞かれますが、兎に角、患者数が減ったことは喜ばしいことです。この突然の感染者数の減少は、どうして起こったかを、専門家として、私なりに考えてみました。
まず、最も大きな理由は、ウイルスを持った人の入国がオリンピック、パラリンピック終了後、減って来たことが、一番と考えます。オリンピック・パラリンピックと流行は関係ないと言われましたが、そのはずはありません。ウイルスは単独で勝手に日本の中に入ってきません。必ず、人の中に入って、感染者として入国して来ます。
海外には未だ流行地が一杯あります。それらの地域からの入国者が減ったことが、感染者減少の要因の一つと考えられます。
その上、7月、8月と気温も湿度も高く、私達のからだの中に入ったウイルスが増やす場所である私達の上咽頭(鼻の奥の部分)の粘膜が健康な状態であり、そのため入ってきたウイルスに対しても強かったのではないでしょうか?それも、流行を減らす要素となっていたと考えます。
更に、急速に進められた市民へのワクチン接種によって、人々の多くが免疫を持ち、感染を拡大させない役割を果たし、感染しにくい状態を作ったことも、大きいと思います。最も大きなことは、国民の感染症予防に対する知識は世界中で一番であり、マスク、手洗いなど、感染症対策には細心の注意を払っていることにあると考えます。そんなことが重なって感染者の減少に結び付いたのではと考えます。
今だからこそ、より適切な予防法をもう一度、確認する必要があると思います。
何処にウイルスが排出されて、どんな方法で取り込まれているかなどの感染経路明確にし、それを断つことで予防したいものですね。
この状態を見ながら、私は、2003年のSARSが発生した時に香港大学を訪れた時のことを思い出していました。流行が収束しかけた頃に開かれた香港大学でのセミナーで、SARSは、現在世界中で流行いる新型コロナ感染症と同じように肺炎で発見され、重症化していることを知りました。その時にセミナーで会った香港大学の医師から、ウイルスが便に排出され、便を介して感染が拡大したことを、教えられました。
※2003年のSARS流行時の香港の風景
セミナーでは、香港のホテルでのクラスターの広がり方を検証し、同じフロアの人だけが感染していることなどから、エレベーターのボタンを介して感染したと、CDCは発表していました。
※ホテルでのクラスターの解明図
今の新型コロナ感染症は臨床症状なども、SARSとほぼ同じです。
現在流行している新型コロナ感染症も感染拡大の方式も、エアロゾルでのウイルスの拡散だけでなく、便を介しての感染拡大も考えて対策を立てる必要があるのではと思います。
実際、日本でのPCR陽性者でホテル療養となった人々の間では、下痢をしている人も多いとのことも耳にしています。
確かに、感染初期には体内に取り込まれたウイルスは上咽頭で増えますので、唾液の中に出ます。すなわち、咳やくしゃみによる飛沫として拡散することに注意することは大切になります。すなわちエアゾルでの感染拡大の可能性も出るでしょうから、マスクは有効です。
しかし、このウイルスは、唾液、くしゃみなどに拡散するだけでなく、同時に便にも排泄されます。それは下水道の調査をしている所からも報告されています。下水道にウイルス出ていると言うことは便に排出されることを意味します。感染者の排便時に手に着いたウイルスによって、あちこちに拡がることも忘れてはいけないと思います。
多くの人が共有するトイレでは、ドアノブ、壁、蛇口などを介してウイルスを拾う可能性はあります。
トイレでは石鹸でしっかり洗ってその後は辺りに触らないようにして、出てきましょう。