麻しん(はしか)は麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身疾患で、感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染でヒトからヒトへと伝播する、極めて感染力の強い感染症です。
麻しんウイルスの免疫のない人では、100%に近い人が発病します。
発病した場合、乳幼児では時に重症化し、肺炎や脳炎などの合併症をおこすと死に至ることもある、警戒する必要がある感染症です。
麻しん(はしか)は、かつては日本でも比較的普通に見られる感染症でした。
幼少時期に罹ることが一般的で、その結果として麻しんに対する終生(一生)免疫を持つ人が増えたことや、隔離、治療などの医療体制の整備が進んだことで、次第に国内での麻しん(はしか)の発生が減りました。同時に、それまでのような感染による自然免疫を持つ人も年々減少していったのです。
ところが、平成19年~20年にかけて、10代~20代を中心に大きな流行が起こりました。
国は麻しんの流行に危機感を持ち、流行を食い止めるため平成20年から5年間、中学一年生、高校三年生の年代に2回のワクチン接種を実施しました。
若年層に人工的な免疫を持たせたのですが、効果は目覚ましく、平成21年以降は患者数が激減し、平成22年以降は19年、20年に流行を起こしたウイルス株の検出は見られなくなりました。
その結果、平成27年3月にはWHOの西太平洋事務局により、「日本は麻疹の排除状態にある」と評価されました。その後の日本での麻しん患者の発生は、海外からの輸入例やそれらの感染者からの二次的な感染例のみになりました。
しかし、海外の多くの国では、麻しんの流行は現在も続いています。身近な国ではインドやインドネシアなどで、日常的に麻しんは発生しています。
そのような現在も麻しんが発生している国々にも、コロナ感染症の取り扱いが変化した途端に多くの人々が出かけました。そして、渡航先で感染して帰国した人から国内での流行が始まったと考えても良いですね。
今の日本人の中には、ワクチン接種が不十分な人(接種そのものを受けていない人や抗体価が上がっていない人など)もいることから、国内の各地で麻しん患者の発生に繋がったと思われます。
4月28日に茨城で麻しん患者の発生が確認され、5月12日には東京で、5月12日には神戸でも感染者が確認されています。
次のコラムでは、麻しん(はしか)の症状などについて書きたいと思います。