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現地レポートエボラ出血熱 ウガンダ・グル地区でのアウトブレーク
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11月2日

エボラ病棟の人気者、大佐(ルテナント)が、今朝は苦しそうに肩で息をしていました。そんな苦しい中でも、回診をしている私たちに、一生懸命に愛嬌を振りまいていました。

ルテナントの呼吸音からは、明らかに肺水腫を起こしていることが想像できました。モニカは「飲めるのにCDCから来た医師は点滴をしろと言うの。もう朝から輸液が2,000入っているのに…」と治療方針の統制が取れていないことに対する不満を私に漏らしました。
患者管理は混成チームで行っているので、個々の医師の知識や経験が異なり、統一した治療方針がないという問題がありました。

十分な検査ができないこのような場所では、方針を検討するための客観的材料に乏しく、統一した意見を導き出すことが難しかったのは事実でした。担当医師たちの経験はさまざまでしたし、それぞれのもつバックグラウンドも違いましたので、治療に対する考え方も異なっていました。

奥の部屋には赤ん坊を連れた母親がベッドに寝ていました。その女性の衰弱ぶりは著しいにも関わらず、それでも子どもに授乳をしていました。

回診に付いていた婦長のフローレンスは、「子どもの世話をする家族が亡くなっているし、 親戚はエボラが怖いので寄ってこないし…。」と、子どもが母親と一緒にいる理由を聞かせてくれました。母親は朦朧としているにもかかわらず、子どもを離そうとするとひどく抵抗しました。

エボラ出血熱の鑑別診断は、建物の外に設けられたトリアージ外来で行われていました。

多くの患者は、自力で来たり、家族に連れて来られたりしていました。その他は、エボラ患者の追跡調査や患者発掘を行うボランティアからなるモバイルチームが、感染の疑いのある人を車で連れて来ていました。

グル病院では、トリアージを病棟外に設置したテントの中で実施していました。そこでは医師とクリニカル・オフィサー(準医師、ウガンダでは地域医療を担っている)の学生が業務を担当し、私たちも病棟での仕事の合間にトリアージにも関わりました。私自身はエボラ出血熱の診断に興味があったため、トリアージでの患者診察は願ってもないことでした。


写真:トリアージテント内

私たちの勤務時間は午前8時半から夕方6時までで、その間に1時間ほどのランチタイムがありました。赤道直下のウガンダのグルの気温は35~36℃で、その中での防護服などの重装備での仕事はまさに拷問のようでした。

特にトリアージテントの下では気温は40℃近くになっていました。実際、患者の検温をすると、誰もが40℃を超えていたものの、気温のためか、病気のためか、判別が難しく感じることも多く見られました。

仕事を終え防護服を脱ぐと、Tシャツはいつも汗でビッショリ濡れていました。

トリアージでは患者のチェック漏れによる感染拡大を防ぐために、診断基準を広めに設定していました。

11月に入ってエボラ出血熱の確定検査が可能となり、検査体制がルーチンに動き出してからは、疑い患者のすべてを採血し、抗原の検索を行い、診断を確実なものにしました。

この時のアウトブレークは、エボラウイルス・スーダン型に近似のウイルスによるものでした。

検査にはPCR法(検体のDNA分析に用いる手法)が用いられ、 ラチョー病院内にCDCが設けた特設ラボが設けられ、そこで実施されていました。検査結果は2日後には判明していました。

エボラ出血熱では、症状がない時点では抗原は陰性であり、症状の出現と抗原陽性がほぼ一致していました。

すなわち、エボラ出血熱患者と接触した人であっても、症状がない時点では注意を要する患者ではないということです。

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