朝、病院に行くとアイダが亡くなったと、婦長のジョセフィーンが教えてくれました。そして、ケネスの検査結果も抗原が陽性であったことを教えてくれました。
病棟の中でケネスはもうほとんど動くことがありませんでした。 奥の部屋に置かれたマットレスの上で、荒い呼吸をしながら、目を開けることもなく、泣くこともありませんでした。
残り時間の少なくなった私と佐多先生は、夜、クリニカル・オフィサーの学生に頼んで、地元の料理を食べに連れて行ってもらう約束をしていました。
夕方のグルの町は人で賑わい、活気に溢れていました。
学生は私たちを地元の人々が利用するホテルのレストランに案内してくれました。彼らが私たちに頼んでくれた料理は、ピーナツバターの牛肉入りシチュー、パタタ(サツマイモ)、野菜のピーナツクリーム和え、ウガンダのパン。
料理はすべてが美味しくて、味は洗練されていて、ここがアフリカのウガンダの田舎であることを忘れさせるような料理ばかりでした。
ビールを飲み、陽気に5人でお喋りを楽しみ、学生が持参したトランプで遊び、すっかり時間が過ぎるのを忘れてしまいました。
帰りは5人でぶらぶらとホテルまで歩きました。
真っ暗な雨上がりの夜道は、ときどき光る稲妻と、フワッと目の前を飛ぶ蛍の明かりが、ひどく幻想的でした。
誰からともなく、蛍の光を見ながら、病棟で亡くなった人の名前が口について出てきました。「あっ、アイダの魂だ」「それはケネスね」「ルテナントもいるよ」…。暗闇の中を、私も佐多先生も学生も涙を流しながら歩いて帰りました。